例えば、紙粘土で人物をつくるとしよう。
ふつう動きの躍動感とか、四肢と胴体のバランスとか、関節の曲がり方とかが制作のポイントになるだろう。
それが、先生の指示はこんなだったのだ。
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| 棒人間 |
また、高学年になるとちょっとデザイン風の課題もある。
正立方体に模様をつけていくのだ。
先生の指示はこんなだった。
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| 紙製の立方体に色紙で模様を貼り付ける |
ところで、今(2017年夏)、国立新美術館である展覧会が開催されている。
あれ? あの小学生のとき作ったやつ、これじゃね?
ということで、30年前の小学校の図工課題を再現してみることにした。
まずは棒人間。
1.土台の板に針金で人体の骨組みを作る。
2.紙粘土で盛る。
3.色をつける。
| よいさっ |
これは、あれだ。
ジャコメッティだ。
<参考画像>
実物(工作の)はもっと金属光沢のある絵の具を使ったので、もっとジャコメッティだった。
次に、箱だ。
1.工作用紙で立方体を作る
2.色紙を円形・輪形に切って、立方体に貼る
児童たちが各々好きな色の色紙を切り出した時、工作の楠木先生が、いいこと思いついた、風に言ったのだ。
「このクラスはシックでモダンな色にしましょうよ」
赤や金色の紙をまさに切ろうとしていた私たちは驚きそして戸惑った。
楠木先生の手から、茶色や灰色の紙が配られた。
| こんなに色があるのに |
| この色だけを使えと |
そしてできあがったのがこれだ。
| シックでモダン |
フランフランで売ってるファブリックにこんな柄あるぞ。
ちなみにこれ、誰も分からないかもしれないけど、すごい再現度なのだ。
こんな箱が、ひとクラス分、40個できあがった。
ジャコメッティとフランフランはこれだけで終わらなかった。
小学校5年生の秋には全校展覧会があった。
その年に図工の時間に作られた工作や水彩画、家庭科の時間につくられたエプロンや巾着袋、そして習字などが展示される。
そのときの展示方法に、子どもたち、そして子どもの作品を見に来た親たちは度肝をぬかれたわけです。
それは展示方法がこんなだったからだ。
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| 1学年分、130体のジャコメッティの群れがみっしり |
箱の展示方法はもっとすごかった。
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| 天井からぶら下がる130個の箱。てっぺんの箱の模様なんて見えない。 |
1学年分130個の箱がテグスで連結されて、体育館の高い天井から青雲の凧みたいにぶら下がっているのだ。
あれはすごいインパクトだった。
美術展の展示方法としては、とても素晴らしいものだったとおもう。
何より斬新だったのは、小学生の展覧会なのに誰が作った作品か、親にはもちろん、作った当人ですら分からなかったことだ。
小学校の展覧会といえば、誰の作品であるかが重要で、学校によっては優れた作品に賞を与えることもあるだろう。
そんなことおかまいなしに、見た目のインパクトを重視し、展示方法も作品の一部だと生徒達に知らしめた楠木先生の英断はすごいと思う。
きっと他の先生達からクレームもあったんじゃないか。
てっぺんの箱は、模様すら見えないのだから。
そしてなによりも思い出に残っているのは、あの「シックな」箱は私たちのクラスだけで、他のクラスは赤や金色や色とりどりの箱だったということだ。
| 5年1組に許された色 |
国立新美術館で9月まで開催中のジャコメッティ展にはぜひとも行かねばなるまい。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/giacometti2017/




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